婦人科豆知識
子宮腺筋症
子宮腺筋症とは、子宮内膜症の組織が子宮筋層内で増殖する疾患です(図)。子宮腺筋症では、子宮内膜症組織が増殖するばかりでなく、周囲の筋層も肥大するため、子宮は腫大し、病変部は硬くなります。子宮腺筋症の病巣は、子宮壁の全体に起こる場合と、限局して起こる場合があります(腺筋腫)。

子宮腺筋症の症状
最も多いのは過多月経です。月経困難症や不正出血を伴うこともあります。進行すると月経時以外にも疼痛が見られるようになります。また不妊や流早産の原因になることもあります。子宮腺筋症は40歳前後に見られることが多いと言われていましたが、最近は30歳代でみられることも多くなっています。
子宮腺筋症の診断
婦人科的診察(内診・超音波検査)やMRI検査で診断します。子宮筋腫との鑑別が必要になりますが、両者が合併することも珍しくありません。血液検査の腫瘍マーカー(CA125)が治療経過の観察に用いられます。
子宮腺筋症の治療
薬物療法と外科的治療があります。薬物療法は子宮内膜症の治療に準じて行われていますが、薬物療法のみで子宮腺筋症を治療するのは困難です。
(1)薬物療法
① 対症療法 | 痛みの症状に対しては鎮痛剤が用いられます。漢方薬を併用することもあります。 |
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② ホルモン療法 | GnRHa療法は有効ですが、治療中止により子宮腺筋症は再燃します。低用量エストロゲン・プロゲスチン(LEP)製剤、黄体ホルモン療法などが用いられることもあります。 |
(2)子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレナ)
月経量の減少や疼痛の改善が見られ、期待されている治療法です。
(3)外科的治療
根治療法は子宮摘出です。子宮温存を希望する場合は子宮腺筋症の病巣だけを除去する手術が行われることがありますが、有効性や安全性については課題が残っています。
(4)その他
子宮動脈塞栓術が行われることがありますが、有効性や安全性については今後の評価が必要です。
※子宮腺筋症の病巣を除去する手術や子宮動脈塞栓術には保険適応はありません。